差圧式流量計の原理(ベルヌーイの定理)

なぜ差圧で流量が計れるの?素朴な疑問をエネルギー保存則そしてベルヌーイの定理から、やさしく、わかり易く解説します。

はじめに

私達の生活に欠くことの出来ない計測器の一つに、流量計があります。
一番身近な、水道。使用した分だけの請求が水道局からありますね。使用した分、つまり、使用した量が、”流量計”によって、計られているのです。

重さや、数は、私達にも簡単に計る(数える)事が出来ます。でも、”流体”を計るのはそう簡単ではありません。水の場合では、あらかじめ”容量”がわかっているコップ(計量カップ)を使い可能ですが空気のような気体は、このような方法は使えません。もっとも、私達が普段の生活の中で、空気の量を測る必要もありませんが、工場では、様々な”流体”の量を測ることは、物を造るうえで必要かつ重要なことなのです。

流量計には、”流体”の量(流量)を計る(計測する)ために、それぞれの流体特性(性質)・計測目的・必要とされる精度(どれだけ正確に測れるかの度合い)等、目的に合った色々な種類の方法があります。ここでは、工場等で使用されている流量計のなかで、一番ポピュラーな、”差圧式流量計”の原理について、やさしく解説します。

ベルヌーイの定理‐エネルギー保存則

差圧式流量計を理解する上で、その原理を知ることが重要です。
なぜ、”差圧”がわかれば”流量”がわかるのでしょうか?この疑問を解くためには、ベルヌーイの定理について理解する事が必要です。

”エネルギー保存則”という言葉を聞かれた事があるかと思います。
物理の世界の基本的な原理のひとつです。(”物理”という言葉が出たからといって、ここで逃げ出しては、何も理解できません。ここは、がまん、がまん・・・)エネルギー保存則とは、”エネルギーは、ある形から別の形へ変化することはあっても、新たに作り出される事や、消えて無くなる事はあり得ない” という原理です。

たとえば、ここに一つのボールがあるとします。このボールをグランドで転がします。ボールは、いつか止まりますよね。なぜ止まるのでしょうか?地面との接触面での摩擦(転がり摩擦、すべり摩擦)や、空気抵抗によって、止まるのだと考えられますね。
エネルギー保存則でいえば、エネルギーは、”形が変わっても、消えない” わけですから、ボールに加えられた最初のエネルギーは、止まるまでの間に、地面との摩擦や空気抵抗によって、”形”が変わっただけにすぎないということになります。この場合、どのような形になったのでしょう?摩擦によって、地面の砂を弾き飛ばすエネルギーや、空気を動かすエネルギー、それらの摩擦によって生じる熱、そしてボールが弾む音(音もエネルギーの一つです)などに変わったのです。
エネルギーは、このように姿、形を変えうるものの、決して無くならないのです。

ベルヌーイの定理を理解する上で、この ”エネルギーは、姿・形は変わるけれども消えて無くならない”という事を先ず最初に理解する事が重要です。

つまり、ベルヌーイの定理とは、このエネルギー保存則を ”流体” に当てはめたものと言えるのです。
下の絵をご覧ください。ラッパ状の管(工業の世界では、”配管”といいます)に流体が流れている絵です。
ベルヌーイの定理とは、簡単に表現すれば、流体が持っている”(1)の所のすべてのエネルギーと、(2)の所のすべてのエネルギーが等しい” というものです。

ここで、数式を使って、すこし詳しく考えてみる事にします。

各記号の意味
P 圧力 γ 流体の比重量 1 (1)の場所
V 流速 g 重力の加速度 2 (2)の場所
Z 基準面からの高さ  

”比重量”とは、”密度”とは、異なります。密度とは、単位体積当たりの質量であり、比重量とは、地球上での単位体積当たりの重量です。混同されている方が多いかと思いますが、ここでは、概要を理解するに当たり、一般に良く使われる表現である”密度”と考えて結構です。

ベルヌーイの定理を、数式で表すと次のようになります。

V12/2g+P1/γ+Z1=V22/2g+P2/γ+Z2……A

または、

V2/2g+P/γ+Z=一定……B

ただし、圧縮性と粘性が無い、理想流体の定常流れにおいてのみ、この式が成り立ちます。しかし、これは、ベルヌーイの定理の概要を理解する上で邪魔な存在となりますので、ここでは説明しません。項目3(差圧式流量計における流量計測の実際 ‐ 理想流体、流量係数他)で簡単に説明させて頂く事にします。

さて、ここで、B式をもとにそれぞれのエネルギー変化を簡素化して考えてみます。

配管上のある場所で、流速 V が速くなったとします。(実際には、配管の径が小さくなり、流速が上がった状態)つまり、速さのエネルギーが高くなったわけです。そうすると、全体のエネルギーは、“一定”ですから、何かが、小さくならなければ、“一定”とはなりません。
重力の加速度 g は、一定、高さが一定、また、流体の比重量 γ が、変化していないとすれば、残りは、圧力 P となりますね。つまり、流速が高くなったことにより、圧力が小さくなったわけです。なんとなく不思議な感じがしますが、エネルギー保存則“エネルギーは、その姿・形をかえても無くなりはしない”ことを思い出してください。

この逆に、流速が小さくなれば(配管径が大きくなり、流速が下がった状態)、圧力が高くなります。この現象を実際にポンプなどに利用する事もあります。(ディフュ<Uー。流れを減速させ、流れの圧力・動圧をその場所の圧力・静圧に回復させる事を目的に用いる)

ご理解いただけましたか?ベルヌーイの定理と、エネルギー保存則の関係を。では、この”ベルヌーイの定理”を応用した、”差圧式流量計”の原理を次の項で解説します。なぜ、差圧がわかれば、流量がわかるのか。ベルヌーイの定理の概要を理解された方にとっては、簡単です。

差圧式流量計の原理‐差圧から流量へ

差圧式流量計の原理を解説する前に、”差圧”について理解していただく必要があります。
差圧とは、読んで字のごとく、”圧力の差”です。 ベルヌーイの定理の解説のなかで使用した絵でいえば、(1)の場所の圧力と、(2)の場所の圧力の差です。さて、本題に戻ることにします。

差圧式流量計には、オリフィスを代表として、ベンチュリ、フローノズル、ピトー管など、様々な流量計があります。これら、”差圧式流量計”と呼ばれるものは、すべて、先にご説明した”ベルヌーイの定理”を応用したものです。ここでは、差圧式流量計の中でも、その性能により高く評価かつご使用されている、”ITABAR流量検出器”を例にとり、具体的に解説します。

ITABARセンサ部の断面と流れ

上の絵をご覧ください。中央にあるのは、ITABAR流量検出器のセンサ部の断面です。
(1)の部分には、流れの圧力(この場合”動圧”といいます)を検出するための小さな穴が開いています。
また、(1)の反対側の部分である(2)の場所にも、流れの圧力(この場合”静圧”といいます)を検出するための小さな穴が開いています。そして、このセンサの周りに流体(例えば”水”)が流れている事を示しています。

ベルヌーイの定理によれば、(1)の場所のすべてのエネルギーの総和は、(2)の場所のすべてのエネルギーの総和と等しいということでした。そこで、(1)と(2)の場所において、ベルヌーイの定理を当てはめて見ましょう。

ベルヌーイの定理と各々の記号の意味は、次の通りです。

各記号の意味
P 圧力 γ 流体の比重量 1 (1)の場所
V 流速 g 重力の加速度 2 (2)の場所
Z 基準面からの高さ  

ベルヌーイの定理の数式は、次のとおりでしたね。

V12/2g+P1/γ+Z1=V22/2g+P2/γ+Z2……A

ここで、基準面からの高さ(Z)は、同じ(Z1=Z2)ですから、上記 A式は、次の様になります。

V12/2g+P1/γ=V22/2g+P2/γ……A

(1)の場所における流力V1は、検出する穴に衝突して、流速はゼロとなる(参考 : 従って、センサの中に次から次へと流体が入ってこないために、ITABARは、想像以上に目詰まりしにくいのです)ことから、V1=0
また、差圧を見て、流量を測りたいわけですから、式A1を流速V2についてまとめてみます。

V22/2g=P1/γ-P2/γ

したがって、

V2=(2g×(P1-P2))/(γ)

となります。つまり、P1とP2がわかれば、流速V2が計算できる事になります。

流量計測を行なう場合、そのほとんどは、管(配管)に流れる流量を計測します。水道も同じですよね。
従って、流速Vがわかれば、その値に配管の断面積Aをかけることにより、流量Qが計算できます。

つまり、Q=AxVとなります。

これで、差圧(圧力の差)をうまく計測する事が出来れば、流量が計算できる事がわかりました。

差圧式流量計における流量計測の実際(理想流体、流量係数他)

しかし、実際に流量を計測しようとする場合、いろいろな問題が生じます。
一つには、ベルヌーイの定理とは、圧縮性と粘性が無い、理想流体の定常流れにおいて、成り立つ理論だという事です。ベルヌーイの定理では、あくまでもこの世の中には存在しない、理想流体の場合に適用される理論なのです。理想流体とは、一体どのような流体なのでしょうか?なかなかイメージし難いものです。

理想流体とは、その流体を構成する物質の大きさが無いものとイメージされるとわかりやすいと思います。
つまり、物質の粒の大きさが無いから、物質同士の摩擦も起きないし、粘性(粘り)も無いわけです。
例えば、毎朝込み合う通勤電車、駅に着いて多くの人が一度に出口のドアーに殺到した場合、人々がぶつかり合い、大変な騒ぎになりますね。 あっちに飛ばされたり、こっちに飛ばされたり、汗だくだくとなります。我々の世界の流体がちょうどこの状況にあたります。仮に人々全員が透明人間(眼に見えないだけではなく、身体も物質として存在しない)であったとするなら、この場合、仮に全員がドア≠レ指しても、それぞれがぶつかり合う事がないため、何ら混乱しないでしょう。 したがって、汗もかかないでしょう。ちょうど、これが理想流体であるといえます。(適当な例ではないかと思いますが、他に、イメージし易い表現があれば、教えてください。)

また一方、発生する差圧は、物体(センサ)の形状等により、その度合いが異なる点も問題の一つです。 同時に、導き出された”流量”は、”センサ周りの流量” であり、配管内部に流れる流量(平均流量)ではない点です。つまり、これらの事から、ベルヌーイの定理から導かれる流量Qは、センサ周りにおける、理論流量ということになります。

正確な流量計測を行なう上で(特に流量計メーカーにとって)重要な点は、この理論流量を補正する係数をどの様に定めるかなのです。この係数を、流量係数と呼びます。理論流量に対して、実際に流れている流量を実流量と呼びます。理論流量(QT)、実流量(QA)、そして、流量係数(K)との関係を式で表すと次の様になります。

QA = K x QT

この流量係数のほかに、流体の物性値にもとづく補正も必要です。たとえば、空気(気体)であれば、温度が高くなれば膨張したりしますね。また、圧力が下がれば同じように膨張しますね。(実際には、膨張させられたから圧力が下がった、という方が正確かもしれません)センサの後方でも、圧力が下がることにより、膨張が発生します。このような補正も正確な流量計測を行なう上で、非常に重要なわけです。

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