日機装株式会社(本社:東京都渋谷区、以下「日機装」)は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため脱炭素燃料として注目される液体アンモニア用のポンプを開発しました。主力電源の一つである石炭火力発電の燃料を段階的にアンモニアに転換することで、CO2の排出削減と電力の安定供給の両立を図る、液体アンモニアの火力発電利用に適合しており、2026年にも市場投入する予定です。日機装は液体アンモニア用ポンプの展開で、脱炭素化と電力の安定供給に貢献していきます。
火力発電は日本の電源構成の7割を超えており(2022年度速報値、経済産業省)、日本の電力を支える電源ですが、一方でCO2排出量が多いデメリットがあり、対策が求められています。火力発電のCO2排出ゼロに向けた第一歩目となる、石炭火力発電のボイラーにアンモニアを混ぜて燃焼させるアンモニア混焼は、混焼率に応じてCO2の排出量を削減できるため、CO2の排出削減と電力の安定供給を両立するための技術の一つとされています。
経済産業省を中心に作成された『2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(2021年)においては、短期的な目標(~2030年)として、石炭火力への20%アンモニア混焼の導入と普及、長期的な目標(~2050年)としては、混焼率の向上(50%)や専焼化技術の実用化を目指すとされています。需要量は、国内では2030年に年間300万トン、2050年に3000万トンと想定されています。
こうした社会的な要請に対応するため、日機装は液体アンモニア用ポンプを開発しました。
・外部漏洩を防ぐためにモータ部まで液中に浸したサブマージド(没液)の構造
液体アンモニアは毒性・臭気があるため、外部に漏洩することを防ぐ必要があります。そのため、配管以外はモータ部も含めて液中に浸したサブマージド(没液)の構造となっています。
・モータをポンプ内部に組み込んで密閉した、キャンドモータポンプの構造で腐食を防止
腐食性がある液体アンモニアに触れてモータが劣化することを防ぐため、モータをポンプ内に組み込んで液体の流路から隔離して密閉する、キャンドモータポンプの構造を採用しました。日機装はすでにアンモニア冷媒冷凍機向けや農業用肥料製造プラント向けの液体アンモニア用キャンドモータポンプを世界で数千台納入した実績があり、こうした経験を生かしています。
・高い送液能力を実現するためクライオジェニックポンプ技術を応用
高い送液能力が求められる燃料向けアンモニアポンプの開発にあたっては、高揚程(汲み上げの高さ)・大流量(吐出しの量)の送液が可能でLNG基地などで使用されているクライオジェニックポンプの技術を取り入れています。クライオジェニックポンプは、1985年に当社が初めて国産化に成功し、現在世界シェアの約50%を占めています。
製造ノウハウが豊富である特殊液体用のキャンドモータポンプとクライオジェニックポンプの優位性を掛け合わせた開発アプローチを取っているのが、日機装のアンモニアポンプです。
用途としては火力発電だけでなく、LNG基地用ポンプの受注実績を生かして、火力発電よりさらに高揚程・大流量が求められるアンモニア基地での受け入れや払い出し用途への展開も視野に入れています。また、ポンプ単体の販売だけでなく、用途に合わせて必要な機器とポンプを組み合わせたパッケージ製品の販売にも力を入れていきます。
<日機装 会社概要>
会社名: 日機装株式会社
本社所在地: 東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号恵比寿ガーデンプレイスタワー22階
創業: 1953年12月26日
代表者: 代表取締役社長 甲斐 敏彦
事業内容: 産業用特殊ポンプ・システム、医療機器、航空機部品等の製造・販売
【本件に関する報道関係者からのお問い合わせ先】
日機装株式会社 企画本部 経営企画部 広報・IRグループ TEL: 03-3443-3717
■本プレスリリースのPDF版はこちら
日機装株式会社(本社:東京都渋谷区、以下「日機装」)は、水素航空機向け液化水素ポンプの実液試験に成功しました。モータ一体型ポンプが液化水素(-253℃)により満たされた極低温の状態(浸漬状態)で、小型電動モータによる高速回転を実現し、液化水素を送り出すことに成功したのは世界初です。日機装は水素航空機の研究開発を進める川崎重工業株式会社(本社:兵庫県神戸市、以下「川崎重工」)から、液化水素ポンプ開発の委託を受けており、2025年度に納入することを目指しております。
燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素を燃料とする水素航空機は、航空分野の脱炭素に向けた次世代の航空機として有力視されています。水素は液化すると気体の800分の1まで体積を圧縮できるため、液化水素が燃料に採用されています。
川崎重工は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に「水素航空機向けコア技術開発」を提案し、21年11月に採択されました。日機装は川崎重工から再委託を受け、液化水素ポンプの開発を担当しています。
今回、日機装が開発している液化水素ポンプは、液化水素を燃料タンクからエンジンポンプへと昇圧して送液するブースタ・ポンプです。航空機用ポンプは小型・軽量であることが求められ、また水素は低密度で昇圧しにくいことから、日機装は従来のポンプ設計よりも高速回転の電動モータを開発し、必要な圧力や流量を確保することを目指しました。
熱収縮率の異なる金属で構成されるポンプを、極低温の液化水素が満ちた状態で高速回転させるには高い技術力が必要ですが、日機装はLNG(-163℃)など極低温流体に対応した産業用特殊ポンプにおける製造実績が豊富にあります。この経験から培ったノウハウを活かしながら、液化水素の極低温下でも高速回転が可能なモータや高速回転に耐えうる軸受、高効率なポンプなどの設計・開発を行っています。
実験は6月に、JAXA角田宇宙センター(宮城県角田市)において実施し、設計通りの良好な結果を得ました。実験で得られた結果を分析し、さらなる小型・軽量化と長寿命化を目指して、試作機の改良を行っていきます。日機装は、水素航空機向け液化水素ポンプの研究・開発を通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
<日機装 会社概要>
会社名: 日機装株式会社
本社所在地: 東京都渋谷区恵比寿4丁目20番3号恵比寿ガーデンプレイスタワー22階
創業: 1953年12月26日
代表者: 代表取締役社長 甲斐 敏彦
事業内容: 産業用特殊ポンプ・システム、医療機器、航空機部品等の製造・販売
【本件に関する報道関係者からのお問い合わせ先】
日機装株式会社 企画本部 経営企画部 広報・IRグループ TEL: 03-3443-3717
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