人工腎臓装置用ブラッドボリューム計の開発

医療機器カンパニー 静岡工場 技術部  森 義博

はじめに

血液透析中に患者様のブラッドボリュームの変化率をモニタするための「ブラッドボリューム計」を開発、2003年に透析用監視装置DCS-73、個人用透析装置DBB-73の任意付属品として上市し、現在、計7機種の任意付属品として採用されています。本稿ではこのブラッドボリューム計について紹介します。

ブラッドボリュームと血液透析における除水

ブラッドボリュームとは循環血液量とも訳され、体全体の血管内の血液量のことです。体重の約1/13の量と言われ、体重50kgの方ですと3.9L程度です。
飲食で摂取された水分は消化管から血液に取り込まれますが、無尿または尿量が少ない透析患者様は余剰水分を主に血管外の組織間に血漿(組織間液)として貯留されます。血漿の血管内外間の移動は静水圧と膠質浸透圧のバランスによりますが、貯留は主に、血液に水分が取り込まれてブラッドボリュームが増えると血圧が高まり、毛細血管で血漿が血管外に押し出される作用が大きくなるために起こります。透析日間の患者様の体重増加はほぼ水分貯留量と見なせ、統計上多いとされる体重の5%として計算すると、体重50kgの患者様では2.5Lにもなります。
貯留された水分は血液透析で除去しますが、この組織間液は直接除去できないため、血液透析の際にダイアライザで血液を限外濾過することにより血液を介して除去(除水)します。除水が行われると、ダイアライザで除去されない血液中の蛋白質濃度が一時的に上昇します。その結果、血液の膠質浸透圧が高まり、組織間液を血液中に移動(血漿再充填)させる作用が大きくなるために除去できるのです。

ブラッドボリュームのモニタの意義

しかし上記のことは裏を返すと、除水によりブラッドボリュームの減少を一時的に伴うことを意味し、血管容積に対してブラッドボリュームが減少するために血圧が低下していきます。その際に身体は心拍数を増やし、血管を収縮させるような作用が働くことで血圧を維持しようとしますが、通常の血液透析は4時間で行われるため、水分貯留量が多い場合などに単位時間当たりの除水量(除水速度)が血漿再充填速度に対して過度に大きくなるとこの作用が及ばなくなり、血圧低下による諸症状、あるいはショックに至ることもあります。特に糖尿病の患者様はこの傾向が強いと言われています。他の原因でも血圧は低下しますが、ブラッドボリュームの減少は主原因の一つです。このことからモニタの意義として、透析患者様の除水量・速度と、ブラッドボリュームや血圧の変化に関連性が見出すことにより、ブラッドボリューム変化の視点から除水方法を検討したり(例えば除水プログラム機能の活用)、あるいは、どの程度の除水ができるのかの目安としたりすることなどが挙げられます。また、血漿再充填に支障をきたすような疾病では除水に伴うブラッドボリューム減少も特異な推移を示すことがあり、患者様の容体を把握するきっかけともなり得ます。

ブラッドボリューム計の概要

(1)測定原理

現在の技術において、非侵襲的にブラッドボリュームあるいはその変化を絶対量(例えば、+0.1L、-0.5L)など)として連続的に精度良くモニタすることには課題がありますが、ある基準に対する変化率(ΔBV:例えば、基準に対して+5%、-10%など)を算出することは可能です。 血液透析の場合、ダイアライザから血球成分は除去されないため、除水を行っても血球成分の量は変化しないと見なせます。これを基にモニタ開始時を基準として除水や血漿再充填による血液の濃縮・希釈の程度を連続的に測定することによりΔBVを算出することができます。具体的には血液の流れる血液回路に近赤外光を照射し、その反射光の強度と血液の濃縮・希釈との相関性を利用して、非侵襲かつ連続的な測定を実現します。

(2)使用形態

透析用監視装置DCS-73・27、および個人用透析装置DBB-73・27・05は装置のイルリゲータスタンド取り付けて使用します(図1)。多用途透析用監視装置DCG-03、個人用多用途透析装置DBG-03は装置筐体に組み込まれています(図2)。モニタは弊社指定の血液回路の動脈側所定位置をブラッドボリューム計にセットすることにより行われます。他に特殊な消耗品を必要しないためコスト面でも有利です。
なお、DCG-03・DBG-03用のブラッドボリューム計はバスキュラーアクセス再循環率測定機能も搭載しているため、これを利用する場合、静脈側血液回路もセットして使用します。なおこの機能については本稿では割愛します。

図1 イルリゲータスタンド取り付け型(DCS-73など)

図2 筐体組込型(DCG-03など)

(3)機能

血液透析中にΔBVをモニタし、装置のLCD画面にグラフや数値で表示できます。任意付属品の血圧計を搭載している装置では、ΔBVと最高・最低血圧、脈拍の推移も同一のグラフで表示でき、ΔBV変化との関連性を容易に比較できます。モニタは手動でも開始できますが、透析開始後、設定された時間に達したときに自動で開始させることもできます。
ΔBV低下に対しては警報点を2点設定でき、そのうち低い方の警報点にまでΔBVが低下すると、除水速度を設定された値に変更します。またΔBVの急激な低下が生じる重篤な状況を想定し、1分間あたりのΔBV低下(%/min)に対する警報点も設定でき、この警報点を超えると除水速度を0に変更します。
モニタしたデータはパソコンを接続してダウンロードできます。データには透析経過時間とともに除水速度や積算値、透析液の電導度などの透析条件、最高・最低血圧、脈拍などの測定結果も含まれおり、透析後の解析や透析条件の見直しなどに活用できます。DCG-03・DBG-03は任意付属品の外部メモリ入出力ユニットを利用すればコンパクトフラッシュカードにデータを取り込むことも可能です。

今後の展望

ΔBVが連続的にモニタできるようになり、今後はブラッドボリューム計の応用開発が課題です。例えば、患者様の除水量に過不足が生じないようにするためにΔBVを活用する方法や、患者様個々に対して臨床的に最適と考えられる血液透析中のΔBV推移を達成するように透析条件を制御する方法など、透析患者様のQOL(生活の質)向上のために医学側の裏づけを得て技術的に実現できることはまだいくつもあると考えています。

(2008年11月 一部更新)

※上記の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。


トップページ > 研究開発 > 人工腎臓装置用ブラッドボリューム計の開発