環境負荷の少ないLNG需要の高まりに対応

環境負荷が少なく、石油に替わるクリーンエネルギーの一つとして注目されている天然ガス。そのなかでもシェールガスは、地球上の全埋蔵量を回収すれば世界の200年~250年分以上を賄えるとされる有望株で、現在、その需要は世界的に拡大しています。
ところで、この天然ガスという気体の化石燃料は、-162℃に冷却して液化すると体積が約600分の1に縮小することから、輸送時にはLNG(液化天然ガス)として効率よく運ぶことができます。そして、このLNGの輸送に欠かせないのが、「クライオジェニックポンプ」です。極低温の可燃性ガスは取り扱いが難しく、それに対応できる特殊ポンプを製造できるのは世界でも数社のみ。当社は、その主要メーカーとして世界各地に製品を供給しています。

液化天然ガスを船から受け入れ、貯蔵し、陸上へ移送するための洋上プラント
液化天然ガスを船から受け入れ、貯蔵し、陸上へ移送するための洋上プラント
日機装クライオジェニックポンプ
日機装クライオジェニックポンプ

設計精度は“精密機器”ともいえる特殊ポンプ

クライオジェニックポンプの基本構造は、1982年に技術提携を結んだ米国J.C.カーター社の技術を受け継いでいます。当時としては斬新な構造でしたが、世界一のLNG消費国である日本の顧客の厳しい要求仕様に合わせた当社独自の改良を施したうえで、国産化に臨みました。
この極めて特殊なポンプの設計上の最大のポイントは、-162℃という極低温下での安定稼働が求められることです。そのため、主要部には異なる金属を用い、強度や耐久性を確保しています。しかし、これは同時に、熱収縮率の異なる金属でできた装置を極低温の液体の中で稼働させることになり、設計には100分の1mm単位の精度が不可欠となります。また、常温では実際の動作確認ができないため、納品前にはテスト施設においてLNGの実液を使用した試験を行い、徹底した製品品質の確認を実践しています。クライオジェニックポンプはまさしく“精密機器”ともいえる、当社の技術力を示す製品と言えるでしょう。

クライオジェニックポンプの基本構造
クライオジェニックポンプの基本構造

世界最大級の高圧ポンプ製造は日機装の独壇場

日機装が手がけてきたクライオジェニックポンプのなかでも、現在、世界最大級に位置付けられているのは、2008年に中国に向けて出荷された、高さ約6m、重さ約4t、出力2,000kWに及ぶ製品です。
ここまで巨大なポンプとなっても、求められる役割や性能に変わりはありません。設備環境や要求仕様に着実に対応し、極低温下でも安定稼働をすることが大前提です。
日機装は、長年のものづくりの経験と独自のノウハウを駆使し、こうした特殊なニーズにも応えています。そして、当社のクライオジェニックポンプは、これまでの蓄積の上に立ち、これからも現場のニーズに対して進化を止めることはありません。

日機装の技術が生み出した世界最大級の高圧ポンプ
日機装の技術が生み出した世界最大級の高圧ポンプ
大型のクライオジェニックポンプ
大型のクライオジェニックポンプ