高度経済成長を牽引した石油化学工業を支えて

戦後の高度経済成長のもと、日本は、1968年にGNP(国民総生産)が資本主義国の中で第2位の経済大国となりました。世界的にも他に類を見ない、焼け跡からの大躍進を遂げた要因の一つは、石油化学工業のめざましい発展にありました。石油を原料として、プラスチックや化学繊維、合成ゴムといった新素材を安く大量生産することに成功した石油化学メーカーは、私たちの暮らしや社会を劇的に変えてきました。化学繊維が「衣」を、建材やさまざまな家庭用製品が「住」のあり方を変え、テレビや自動車などの普及も石油化学の技術なくしてはありえません。
日機装は、石油化学工業の勃興期からさまざまな特殊ポンプを供給してきました。なかでも、独自開発した完全無漏洩の「キャンドモータポンプ(ノンシールポンプ)」は、安全性の確保と環境保全に貢献しながら、この業界の発展を支えてきました。

1960年 フル稼働する石油化学コンビナート
1960年 フル稼働する石油化学コンビナート

世界で初めて、“完全無漏洩ポンプ「キャンドモータポンプ」”の実用化に成功

1956年、日機装は、無漏洩ポンプの需要拡大を見込んで、米国ケミポンプ社との技術提携により、「キャンドモータポンプ」の国内製造を開始しました。
危険な液体を取り扱う石油化学・一般化学工業分野において、ポンプ部とモータ部が一体化した密閉構造を持つキャンドモータポンプはまさに理想的なポンプ。ところが、回転軸を支えるカーボンベアリングという部品がポンプ内部にあったため、外部から磨耗状態がわからず、前触れもなくモータが焼き付いて急停止するという弱点があったのです。ケミポンプ社ではこの問題を解決できず、技術提携を解消することになりました。
そして、これらの問題を解決するため、日機装は独自開発に踏み切り、ベアリングの磨耗状況を検知できる装置「ベアリングモニタ」を搭載することで、世界初、実用レベルの完全無漏洩ポンプが1963年に完成し、「ノンシールポンプ」という名称で市場に投入されました。

米国ケミポンプ社のキャンドモータポンプ
米国ケミポンプ社のキャンドモータポンプ
ノンシールポンプ
ノンシールポンプ

「Eモニタ」の開発により、長年の課題を克服

石油化学コンビナートなどの安全性向上と予防保全に、当社の「ベアリングモニタ」は大きく貢献しました。
このモニタは日々改良が加えられ、その進化系が現在主流となっている「Eモニタ」です。
「Eモニタ」は、モータ部分に内蔵されたサーチコイルを通して、カーボンベアリングの摩耗を、電気的にリアルタイムに検出・表示するといった仕組みになっています。
この画期的な機能を備えた「ノンシールポンプ」は、長年にわたりポンプからの液体漏洩に悩まされていた石油化学・一般化学工業界から大いに歓迎されました。
また、特殊用途で使われる「ノンシールポンプ」にとって、アプリケーションエンジニアリグも重要なポイントです。
使用される液体や薬品は各種各様で、その化学的性質も千差万別です。これまでの豊富な経験に基づくアプリケーションエンジニアリングで、当社は、その一つひとつのケースに対して、適切な材質や構造などを見極め、いわば完全受注生産というかたちで対応してきました。こうして、数十万台にものぼるオーダーメードの「ノンシールポンプ」が石油化学・一般化学工業の発展に貢献し、日本の経済成長を側面から支えてきたのです。

日機装独自のEモニタ
日機装独自のEモニタ